狭小住宅の外壁塗装|足場の組み方・隣地使用・近隣対策
隣家との隙間が数十cmしかない狭小住宅では、外壁塗装の見積もりで「足場が組めるか」「隣の敷地を使わせてもらう必要があるか」が最初の論点になります。広い敷地の家と同じ手順で進めると、着工直前に隣家との調整が間に合わなかったり、塗れない面が残ったりすることがあります。
この記事では、隙間の幅によって足場の組み方がどう変わるか、2023年4月に改正された民法の隣地使用のルール、塗料や洗浄水の飛散を防ぐ方法、近隣への説明の進め方を順に整理します。3階建ての狭小住宅で高さに応じて必要になる安全対策は、3階建ての外壁塗装費用で詳しく解説しています。
最も狭い隙間の寸法を伝えて見積もりを取る
外壁塗装見積ナビで見積もりを依頼する際は、隣家との最も狭い隙間の幅、室外機や給湯器の位置、隣地を使う必要がありそうな面を伝えましょう。足場の組み方と隣地への対応を施工店ごとに比べやすくなります。
隣家との隙間の幅で足場の組み方が変わる
狭小住宅の外壁塗装では、まず外壁から境界や隣家までの幅を面ごとに測ることから始めます。測るのは一番広い場所ではなく、エアコンの室外機、給湯器、雨樋、ガスメーターなどが出っ張っている最も狭い箇所です。人が横向きで通れる幅があっても、足場の支柱と作業床を置ける幅があるとは限らないためです。
足場には、支柱(建地)を2列に立てて間に作業床を渡す「本足場」と、支柱を1列だけ立てる「一側足場(ひとかわあしば)」などがあります。労働安全衛生規則の改正により、2024年4月1日からは、幅が1m以上の箇所で足場を使うときは原則として本足場を使うことになりました(第561条の2)。厚生労働省の資料をもとに、隙間の状況ごとの考え方をまとめると次のようになります。
| 外壁まわりの状況 | 足場の考え方(厚生労働省資料より) | 施工店に確認すること |
|---|---|---|
| 施工側が使える幅が1m以上ある | 原則として本足場を使う | 本足場の配置と、隣地にかかる部分の有無 |
| 幅が1m未満 | 可能な限り本足場とし、難しければ一側足場などを検討 | 採用する足場の種類と、塗り残しが出ない方法 |
| 幅は1m以上あるが、一部が隣地や公道で使用の許可が得られない | その部分は「幅1m以上の箇所」に含まれない | 隣地や道路の使用について、誰がいつ確認するか |
| 撤去が難しい障害物があり、支柱を2列に立てられない | 本足場の使用が困難な場合に当たりうる | 室外機などの脱着や移設の要否と費用 |
厚生労働省の資料は、建物と足場の作業床の間隔を30cm以内とすることが望ましいとも示しています。隙間が狭い面では、足場の種類によって作業床の位置や塗りやすさが変わるため、見積書と一緒に面ごとの足場の配置図を出してもらいましょう。足場の単価や面積の比べ方は足場代の見積もり比較を参照してください。
なお、民法第234条は、建物を建てるときは境界線から50cm以上離すことを原則としていますが、異なる慣習がある場合や、防火地域・準防火地域で外壁が耐火構造の建物を境界に接して建てる場合(建築基準法第63条)の例外があります。隣家側の壁が境界にほぼ接している家では、自分の敷地だけでは足場を置けないこともあります。
隣地を使うときのルールは2023年4月の民法改正で変わった
足場の一部を隣の敷地に置く、隣の敷地に立ち入って作業するといった場合は、隣地の使用にかかわるルールを知っておく必要があります。民法第209条は、令和3年法律第24号による改正で2023年4月1日から内容が変わりました。
| 項目 | 改正前の第209条 | 改正後の第209条(2023年4月1日施行) |
|---|---|---|
| 権利の書き方 | 隣地の使用を「請求することができる」 | 必要な範囲内で隣地を「使用することができる」 |
| 対象となる目的 | 境界付近での障壁・建物の築造・修繕 | 境界付近の障壁・建物その他の工作物の築造・収去・修繕、境界標の調査や測量、越境した枝の切取り |
| 住まいへの立入り | 隣人の承諾が必要 | 居住者の承諾が必要 |
| 使う日時・場所・方法 | 定めなし | 隣地の所有者と使用者にとって損害が最も少ないものを選ぶ |
| 事前の通知 | 定めなし | 目的・日時・場所・方法を所有者と使用者にあらかじめ通知(困難なときは使用開始後に遅滞なく) |
| 損害が生じたとき | 隣人は償金を請求できる | 所有者・使用者は償金を請求できる |
改正後の条文は、必要な範囲で隣地を使えることを明確にしつつ、使い方を損害が最も少ないものに限り、事前の通知を求めています。外壁の塗り替えは建物の修繕に当たるため、足場の設置はこの規定にかかわる場面の一つです。ただし、隣家の建物の中には居住者の承諾なしに立ち入れません。
実務では、法律上の権利があるかどうかより、隣家に納得して協力してもらえるかが工期を左右します。隣地を使う範囲を図に示し、期間、作業時間、足場を置く位置、植木や物置などの養生方法を書面で伝え、了承を得た内容を記録に残しましょう。隣家が使用を拒んでいる、所有者が分からないといった場合に、無断で足場を組むことは避けてください。工法の変更で隣地を使わずに済む方法がないかを施工店と検討し、それでも折り合わないときは弁護士など専門家に相談しましょう。
狭い場所では塗料と洗浄水の飛散対策を厚くする
隣家との距離が近いほど、塗装や高圧洗浄の影響は隣の外壁、窓、車、洗濯物に届きやすくなります。飛散対策は、工法の選択、足場のシート、隣家側の養生の三つを組み合わせて考えます。
国土交通省の建設工事公衆災害防止対策要綱は、外部足場をメッシュシートなどで覆い、落下物による危害を防ぐ措置を施工者に求めています。労働安全衛生規則第563条も、物の落下で危険がある足場には幅木やメッシュシートなどを設けるよう定めています。狭小住宅では、隣家側の面だけシートの目を細かくする、二重にするといった対応ができるかを確認しましょう。
塗り方も飛散の量を左右します。吹き付け(スプレーガン)は塗料の霧が広がりやすいため、隣家が近い面ではローラーや刷毛で塗る方法を検討しましょう。仕上がりの模様を吹き付けで出している外壁では、ローラーで再現できる模様かどうかを事前に見本で確認してください。違いの詳細はローラー塗装と吹き付け塗装の違いで解説しています。
高圧洗浄の日は、水しぶきと汚れが隣家側へ飛びやすい工程です。洗浄の日程を隣家に事前に知らせ、窓を閉めてもらう、洗濯物を室内に干してもらうといった協力を頼んでおくと安心です。万一、隣家の車や外壁に塗料が付いた場合の対応は塗料が車・隣家に飛散したときの進め方、施工店が加入する保険は外壁塗装の賠償責任保険で確認できます。
近隣への挨拶は、隣地使用の説明と合わせて早めに行う
狭小住宅では、近隣への挨拶が単なる礼儀ではなく、工事の段取りそのものになります。建設工事公衆災害防止対策要綱も、工事の概要と公衆災害防止の取組を、あらかじめ付近の居住者に周知するよう定めています。
挨拶では、工事の期間と作業時間に加えて、足場を組む日と外す日、高圧洗浄の日、隣家側の面を塗る時期、隣地を使う場合はその範囲を伝えましょう。施主と施工店の担当者が一緒に訪問し、困ったときの連絡先を書いた案内文を渡すと、工事中の相談が施工店へ直接届きやすくなります。隣地を使う家には、足場の配置図を見せながら説明すると、使う場所と期間の認識がずれにくくなります。
挨拶の範囲や案内文の例、品物の考え方は外壁塗装の近所挨拶で紹介しています。挨拶を施工店に任せる場合でも、隣地使用の了承は施主自身が隣家と話しておくと、着工後の行き違いを防ぎやすくなります。
狭小住宅の見積書で確認する項目
狭小住宅の見積書は、足場や養生の条件が家ごとに違うため、施工店によって工事の進め方そのものが分かれます。総額だけで比べず、狭い面をどう施工するかが書かれているかを確認しましょう。
| 項目 | 狭小住宅で差が出やすい理由 | 施工店に確認すること |
|---|---|---|
| 足場の種類と配置 | 隙間の幅で本足場か一側足場かが変わる | 面ごとの足場の種類と配置図 |
| 隣地使用 | 隣の敷地に足場や作業スペースがかかる | 使う範囲と期間、隣家への説明の分担 |
| 塗装方法 | 吹き付けは霧が広がりやすい | 隣家側の面の塗り方と、模様の仕上がり見本 |
| 養生・シート | 隣家の窓や車、植木が近い | シートの種類と範囲、隣家側の養生方法 |
| 設備の脱着 | 室外機や給湯器が狭い隙間をふさぐ | 脱着の有無、担当する業者、費用 |
| 塗れない面の扱い | 足場を置けず施工できない面が出ることがある | 塗らない範囲と、その理由の説明 |
見積もりの段階で「隣地を使わないと塗れない面がある」と分かっている場合は、その面を含む案と含まない案の両方を出してもらうと、隣家との調整の結果に応じて判断しやすくなります。工事中の車の置き場所は外壁塗装中の車の移動、養生の範囲と費用は外壁塗装の養生も参考にしてください。
よくある質問
隣家との隙間が狭くても外壁塗装の足場は組めますか?
幅が1m以上あれば原則として本足場を使い、1m未満で本足場が難しい場合は一側足場などを検討します。人が通れる幅でも、室外機などの出っ張りで足場を置けないことがあるため、最も狭い箇所の寸法が判断の基準になります。現地調査で面ごとの足場の種類と配置図を示してもらいましょう。
足場を組むために隣の敷地を使うことはできますか?
2023年4月1日施行の改正民法第209条は、建物の修繕などのため必要な範囲で隣地を使用できると定めています。ただし、使う日時・場所・方法は隣地の所有者と使用者の損害が最も少ないものを選び、目的などをあらかじめ通知する必要があります。隣家の住まいの中には居住者の承諾なしに立ち入れないため、実際には書面で説明して了承を得てから進めるのが安全です。
隣家が足場の設置を断った場合はどうすればよいですか?
無断で隣地に足場を組むことは避け、隣地を使わずに施工できる方法がないかを施工店と検討しましょう。一側足場への変更や、隣家側の面だけ工程を分けるといった案が出ることもあります。それでも話し合いがまとまらない場合は、弁護士など専門家に相談してください。
狭小住宅の外壁塗装で、隣家への塗料の飛散を防ぐ方法はありますか?
足場をメッシュシートで覆い、隣家側の面は吹き付けではなくローラーや刷毛で塗る方法を選ぶと、霧状の塗料が広がりにくくなります。高圧洗浄の日を事前に伝え、窓を閉める、洗濯物を室内に干すといった協力を頼むことも有効です。万一付着した場合の連絡先と、施工店が加入している保険を契約前に確認しておきましょう。
狭小住宅の外壁塗装では、近所への挨拶はいつ行えばよいですか?
隣地を使う必要がある場合は、見積もりの段階で施工店と方針を決め、契約後なるべく早く隣家に説明しましょう。一般的な挨拶は着工の前に行いますが、隣地使用の了承は足場の計画に影響するため、それより前に話しておく必要があります。足場を組む日、高圧洗浄の日、工事の期間と連絡先を伝えてください。
まとめ
狭小住宅の外壁塗装は、隣家との最も狭い隙間の寸法で足場の組み方が決まります。2024年4月からは幅1m以上の箇所で原則として本足場を使うことになり、幅が足りない面や障害物のある面では別の方法を検討します。隣地を使う場合は、2023年4月施行の改正民法第209条のとおり、損害の少ない方法を選び、事前に通知し、了承を記録に残しましょう。
塗料や洗浄水の飛散は、メッシュシート、塗り方の選択、隣家側の養生を組み合わせて防ぎます。見積もりでは、面ごとの足場の種類、隣地使用の範囲、塗れない面の扱いまでそろえて比べることが大切です。
狭い面の施工方法をそろえて見積もりを比べる
外壁塗装見積ナビで見積もりを依頼する際は、各社に面ごとの足場の配置図、隣地を使う範囲、隣家側の塗り方と養生の方法を示してもらい、同じ条件で比べましょう。