外壁塗装で家に傷が付いたら?記録・保険・補修の進め方
外壁塗装の工事では、足場の組み立てや解体、高圧洗浄、養生テープの貼り剥がし、資材の運搬など、住まいに道具や人が触れる作業が続きます。注意して進めても、サッシの擦り傷、雨樋の割れ、カーポート屋根のひび、植木の枝折れといった損傷が起きることがあります。
傷を見つけたときに大切なのは、感情的に責める前に「いつ、どこが、どう傷んだか」を記録し、施工店に原因の調査と修理方法を書面で示してもらうことです。この記事では、工事中に起きやすい傷の種類、元からあった傷との区別、施工店が加入する賠償責任保険の仕組み、修理と費用負担の合意、話し合いが進まないときの相談先を順に説明します。
傷の補修方法まで比べて依頼先を選ぶ
外壁塗装見積ナビでは、複数の施工店へ見積もりを依頼し、養生の範囲や賠償責任保険の加入状況、工事中に損傷が出たときの連絡方法を比べられます。
工事中に起きやすい傷と、元からあった傷の見分け方
外壁塗装の工事で付く傷は、どの作業で何が触れたかによって場所と形がある程度決まります。傷を見つけたら、まず次の表で「その時期にその作業があったか」を照らし合わせると、施工店へ説明を求める範囲を絞れます。
| 部位 | 起きやすい損傷 | 関係しやすい作業 | 照合する記録 |
|---|---|---|---|
| 外壁・笠木・破風 | 擦り傷、欠け、へこみ | 足場の組み立て・解体、資材の接触 | 足場設置日と解体日の写真 |
| サッシ・網戸・ガラス | 擦り傷、網の破れ、ガラスのひび | 養生、高圧洗浄、脚立の立て掛け | 養生前後の写真、洗浄日の日報 |
| 雨樋・換気フード | 割れ、外れ、曲がり | 足場の固定、塗装時の取り外し | 付帯部の工程写真 |
| カーポート・テラス屋根 | 屋根材のひび、割れ | 足場の上からの落下物、踏み抜き | 作業員の配置、落下物の有無 |
| 床タイル・土間・植栽 | 欠け、汚れ、枝折れ | 足場材の搬入、職人の通行 | 搬入日の写真、近隣との境界 |
| 車・自転車・室外機 | 擦り傷、塗料の付着 | 移動の依頼漏れ、養生不足 | 移動・養生の依頼内容 |
工事中の傷は、作業した位置と高さが一致し、傷の断面が新しく、周囲に汚れや色あせが乗っていない状態で見つかることが多いものです。反対に、傷の内側までコケや汚れが入り込んでいる、錆が進んでいる、周りの塗膜と同じように色あせているといった状態なら、工事より前からあった可能性も考えられます。
ただし、見た目だけで工事前か工事中かを断定することはできません。施主と施工店の主張が分かれたときに頼りになるのは、着工前の写真と工程ごとの記録です。次の章で、その記録を工事前にどう残すかを説明します。
着工前の現況記録と、見積もり段階で確認したい施工店ごとの違い
着工前の写真は、施工店が現地調査で撮るものと、施主が自分で撮るものの2種類をそろえておくと安心です。施工店の写真は塗装の劣化を診断する目的で撮られるため、サッシや床、車庫の屋根まで写っていないことがあります。足場が組まれる前日までに、家の四方の全景と、傷みやすい物の近景を日付入りで撮っておきましょう。
撮っておきたいのは、カーポートやテラスの屋根材、雨樋と集水器、網戸、エアコン室外機と配管カバー、門扉、玄関まわりの床タイル、植木、駐車している車です。すでに傷やひびがある箇所は、指で示すかメジャーを当てて撮っておくと、工事後に同じ位置を比べやすくなります。その写真を施工店とも共有しておけば、後から「元からあった傷」という説明と食い違ったときに双方で確認できます。
見積もりを比べる段階では、塗料や金額のほかに、次の点で施工店ごとの違いが出ます。
- 養生の範囲:サッシや床だけでなく、カーポート屋根や植栽、室外機まで覆うか
- 物の移動:鉢植えや物置、車の移動を誰が、いつ行うか
- 現況写真:着工前に施工店が撮影し、施主へ渡すか
- 賠償責任保険:工事中の事故に備える保険へ加入しているか
- 連絡体制:損傷が出たときに誰へ連絡し、何日以内に回答するか
これらは見積書に書かれないことが多いため、現地調査のときに質問し、回答をメールなどで残しておくと比較しやすくなります。養生する範囲と費用の考え方は外壁塗装の養生は業者で違う|範囲と費用を見積もりで確認で詳しく説明しています。
傷を見つけた直後の記録と連絡の手順
傷を見つけたら、最初に安全を確かめます。割れたガラスや外れかけた雨樋、垂れ下がった配線などは、家族が近づかないようにして、施工店に応急措置を依頼してください。危険がない傷は、原因が分かるまで拭いたり、自分で補修したりせず、そのままの状態で記録します。
写真は、家全体のどこにあるかが分かる全景、周りの部材との位置関係が分かる中景、傷そのものの近景の3段階で撮ります。近景にはメジャーや定規を添えて大きさを残し、撮影日時が記録される設定で撮影してください。動画は状況をつかむのに便利ですが、比較には静止画が向いているため、両方を残すと後で使いやすくなります。
連絡は、現場の職人への口頭の報告だけで済ませず、契約した施工店の担当者に入れましょう。電話で伝えた場合も、その日のうちにメールやメッセージで「発見した日時、場所、状態、写真、こちらの要望、回答してほしい日」を送ると、やり取りの記録が残ります。施工店には、その日の作業内容と作業員、日報や工程写真をもとに原因を調べてもらい、調査結果と修理の提案を書面で求めます。
塗料が車や隣家に付いた場合は、傷とは対応の進め方が少し異なります。飛散したときの記録と補償の流れは外壁塗装の塗料が車・隣家に飛散したら?証拠と補償の進め方を参考にしてください。
補償の根拠と、施工店の請負業者賠償責任保険
工事の作業で施主の家や持ち物を傷つけた場合、施工店に過失があれば損害を賠償する責任が生じます。民法は、契約に従った履行をしなかった債務者の損害賠償責任(第415条)と、故意または過失で他人の権利を侵害した者の損害賠償責任(第709条)を定めています。実際の負担割合は原因や契約内容によって決まるため、まずは施工店の調査結果を待ち、その根拠を確かめる流れになります。
こうした事故に備えて施工店が加入する保険に「請負業者賠償責任保険」があります。損害保険会社の商品説明では、請負作業の遂行中に起きた事故や、作業のために管理する施設の不備による事故で、法律上の賠償責任を負った場合に保険金を支払う保険とされています。同じ説明の中で、損害賠償額を決める前に保険会社の承認を得る必要があることも示されています。施工店が「保険会社と相談します」と答えてすぐに金額を示せないのは、この手続きがあるためです。
保険の対象になるかどうかは、保険契約の条件と事故の内容で決まります。工事を請け負っている部分そのものの損傷や、施工店が預かっている物の損害は、契約によって補償の扱いが分かれることがあるため、施主から次の点を確認しておきましょう。
- 賠償責任保険への加入の有無と、保険会社へ事故を報告した日
- 保険会社の調査(鑑定)が入る予定と、その日程
- 保険で支払われない部分が出た場合に、施工店が自社で負担するか
保険の手続きが長引いても、補償の請求をあきらめる必要はありません。ただし、民法は不法行為による損害賠償請求権について、損害と加害者を知った時から3年間行使しないと時効で消滅すると定めています(第724条)。工事が終わった後も話し合いが止まったままにならないよう、回答期限を区切って進めてください。
修理方法と費用負担を書面で合意する
原因が工事にあると分かったら、次は「どこまで、どの方法で直すか」を決めます。同じ傷でも、部分的な補修で済ませるか、部材を交換するかで仕上がりと費用が大きく変わります。施工店の提案をそのまま受け入れる前に、次の表の観点で比べてみてください。
| 修理方法 | 向いている損傷 | 確認しておく点 |
|---|---|---|
| 部分補修(タッチアップ) | 塗膜の浅い擦り傷、小さな欠け | 周りとの色や艶の差、補修跡の見え方 |
| 一面または一部材の塗り直し | 補修跡が目立つ範囲の傷 | 塗る範囲の区切り、使う塗料と回数 |
| 部材の交換 | 雨樋の割れ、網戸の破れ、屋根材のひび | 同じ製品や色の入手可否、取り付ける業者 |
| 専門業者による補修 | サッシ、ガラス、タイル、車の傷 | 見積書の提出者、費用の支払い方 |
| 金銭での精算 | 植木の枯れ、後日自分で直す物 | 金額の根拠、精算後に請求しない範囲 |
サッシやカーポートのように塗装店では直せない部材は、メーカーや専門業者が補修することになります。その場合は、専門業者の見積書を施工店経由で受け取るのか、施主が直接受け取って施工店に請求するのかで手続きが変わるため、先に決めておくと支払いで迷いません。
合意した内容は、修理する範囲、方法、使う材料と色、作業する業者、費用を負担する者、作業日、完了を確認する方法の7点を書面やメールに残します。補修した部分は、工事全体の完了時にもらう書類にも追記してもらいましょう。完了時に受け取る書類の確認点は外壁塗装の完了時にもらう書類|保証書・工程写真・使用塗料で説明しています。
残金の支払いについては、契約書の支払条件を確認したうえで、補修の完了を支払いの条件に含めるかを施工店と書面で取り決めてください。施主の判断だけで支払いを止めると、相手との関係がこじれ、話し合いが長引く原因にもなります。
話し合いが進まないときの第三者相談先
施工店から回答がない、原因の説明が二転三転する、修理方法で折り合わないといった場合は、第三者に相談しましょう。相談するときは、着工前と発見時の写真、契約書と見積書、施工店とのやり取りを時系列にまとめておくと、状況が伝わりやすくなります。
住宅に関する専門の窓口として、国土交通大臣の指定を受けた公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」があります。電話相談(03-3556-5147、平日10時〜17時)では、建築士の資格を持つ相談員が対応します。さらに、弁護士と建築士が対面で相談に応じる専門家相談(1時間、原則無料)もあり、リフォーム工事の発注者はリフォーム瑕疵保険に加入していなくても利用できると案内されています。
契約や支払いをめぐるトラブルとして相談したい場合は、消費者ホットライン「188」に電話すると、近くの消費生活センターなどの相談窓口につながります。訪問販売で契約した工事や、説明と違う請求を受けた場合などにも利用できます。工事中のトラブル全般の相談先は外壁塗装のトラブル事例と相談先|工事前・工事中・工事後の対処法にまとめています。
よくある質問
工事前からあった傷だと施工店に言われたらどうすればよいですか?
着工前に撮った写真と、傷を見つけた時の写真を同じ位置で並べて施工店に示しましょう。施工店の現地調査写真にその部分が写っていれば、あわせて見せてもらうと判断の材料が増えます。写真がない場合でも、傷の断面の新しさや作業との位置関係を記録し、住まいるダイヤルなど第三者に意見を聞く方法があります。
小さな擦り傷なら上から塗ってもらうだけで十分ですか?
塗膜の表面だけの浅い傷なら、部分補修で目立たなくなることが多いです。一方で、部材の割れや変形、ガラスのひびは塗装では元の性能に戻らないため、交換や専門業者の補修が必要です。補修後に色や艶の差が残ることもあるため、どの範囲まで塗るかを事前に決めてから依頼してください。
施工店が「保険で対応する」と言ったまま返事がないときはどうしますか?
保険会社へ事故を報告した日、調査の予定、支払いの見込み時期を書面で確認しましょう。賠償責任保険は賠償額を決める前に保険会社の承認を要するため、一定の時間はかかります。それでも回答期限を過ぎて進展がない場合は、保険で支払われない部分の扱いも含めて施工店に説明を求め、住まいるダイヤルなどに相談してください。
隣家の車や外壁に傷が付いた場合、施主が賠償しなければなりませんか?
民法第716条は、請負人が仕事について第三者に加えた損害を、注文者は原則として賠償する責任を負わないと定めています。ただし、注文や指図に注文者の過失があった場合は例外です。隣家から連絡を受けたら、施工店に事実を伝えて調査と対応を求め、施主は経過を記録しながら近隣との連絡を取り持ちましょう。
補修が終わるまで残金の支払いを待ってもらうことはできますか?
契約書の支払条件によって扱いが変わるため、まずは支払時期の定めを確認してください。そのうえで、補修の完了と確認を支払いの条件とすることを施工店と書面で取り決めれば、双方が納得した形で支払いを調整できます。合意のないまま一方的に支払いを止めるのは避け、取り決めが難しい場合は第三者に相談しましょう。
まとめ
外壁塗装の工事中に付く傷は、足場、高圧洗浄、養生、資材の運搬など作業ごとに起きやすい場所が決まっています。着工前に家の四方と傷みやすい物を撮影し、傷を見つけたら全景・中景・近景の写真と、日時を残したメールで施工店に連絡することが、元からあった傷との争いを防ぐ基本です。
補償は、施工店の調査結果と賠償責任保険の手続きを確かめながら進め、修理方法、費用の負担者、完了の確認方法を書面で合意しましょう。話し合いが進まないときは、住まいるダイヤルや消費者ホットライン188に、記録をまとめて相談してください。
工事中の備えまで比べて施工店を選ぶ
外壁塗装見積ナビでは、複数の施工店から見積もりを取り、養生の範囲、着工前の写真の共有、賠償責任保険への加入、損傷時の連絡体制を同じ条件で比べられます。